ファッション
 まず、それまでの黒人ミュージシャンのファッションって、あまり趣味がよろしくないっていうか、はっきりいってダサかったじゃないですか。でもフィッシュボーンのスタイルってのは、あきらかにそれまでのブラック・ピープルのそれとは違っていた。スカ・カルチャーの影響なのかもしれないけど、アンジェロ、クリスとかケンダルなんかの出で立ちは独特だったし、他のメンバーも丸いサングラスかけたりして、とにかくカッコよかったですね。おれはファッション疎いんでブランドの事とか全然分からないけど、アンジェロのスーツ姿なんか、70年代的ソウル系のファッションとも、ヒップホップ的ファッションとも、あきらかに違っていた。そこがものすごくカッコよかったですね。

ごちゃまぜ
 それと、もちろん音楽的ごった煮具合ですよね。初期はスカ、パンクバンドとしての面が表に出ていた感じが強いんですけど(ファースト聴いても明白ですよね)、セカンド、サードくらいを聴くと分かるんだけど、スカの裏に実はファンク・グルーヴがあるんだってことに気がつかされてきて、だんだんこのバンドのいちばん根っ子の部分、やっぱりファンクなんじゃないかって思うようになりました。P-Funkの影響がかなり如実に表れてる曲は多いし。あと、これは直接P-Funkという訳ではないけど、「Truth and Soul」に入ってる「Bonin' In The Boneyard」!ブリブリファンキーな曲で、もうたまりません!って感じ。もちろん、それと同じくらいパンク的表現でも突き抜けてるってところがすごいんですけどね。静かなバラードの後にいきなり高速パンクチューンになだれこむアルバムの流れとか、他にもレゲエ、ソウル、R&B、ジャズ、ハードコア…ここまで多様な音楽性をひとつにまとめ上げて、結果的に「フィッシュボーンの」音楽になっている…こんなバンドは、他では絶対見つかりませんからね。

ブラックミュージック
 パンク、ロック要素はもちろんなんだけど、同時に、ある意味トラディショナルなブラックミュージック的素養がしっかりと根付いてるところがこのバンドの凄いところだと思うんですよ。あんまり語られることはないですけど、彼らのコーラスワークってすごくキレイですよね。すごくハードコアな曲でも緻密にコーラスがつけられてたりする(例えば「Fight The Youth」など)…ソウル、R&Bのスタンスで、そのままパンクをやってしまうような面白さって、彼らの最大の魅力の一つだと思うんですよ。…これは以前別のところで言ったことなんですけど、スティーヴィー・ワンダーがいきなりハードコア・パンクやり出しちゃうような…。これは割と偏見かもしれないんですけど、白人のハードコアってカタルシスはあるけど、同じような曲調のものを並べられるとやっぱり聴いてて疲れちゃう。その点、フィッシュボーンの音楽は奥が深いっていうか、心を豊かにしてくれるように感じます。

社会性、政治性
 フィッシュボーンは一作目から高い社会的、政治的メッセージを発していて、ずっとその姿勢をキープしていますよね。もちろん、ブラックコミュニティにおける貧困、ドラッグなど数々の問題もアグレッシヴに告発しているワケなんですが、他方、利己的な政治家、権力、戦争、メディア支配…などに対する批判、痛烈な皮肉もそこここに見受けられます。彼ら自身もしょっちゅう述べているように、こうした姿勢がバンドの「売れない」原因にもなっているワケですよね。ケンの立たない事だけ歌っていた方が、売れるチャンスはぜったい多かったはずです。でも、彼らはぜったいアグレッシヴな姿勢をやめないだろうし、自分たちが「角の立つ」バンドであることに誇りを持っているんだろうと思います。

ブルーズ
 アンジェロはかつて、なにかのインタヴューで「おれたちのやっている音楽は、基本的には現代のブルーズだと思っている」といった趣旨の発言をしています。ブルーズ…音楽的には無縁のように思えますが、それはもともとブラックピープルが身の回りの貧困や差別、どうにもならない絶望感を歌ってきた音楽であることを考えると、フィッシュボーンのやっている事は「思想的な意味」での現代版ブルーズだ、と言えるんじゃないでしょうか。

ポジティヴィティ
 ライヴを体験すると特に思うんですが、ものすごくポジティヴですよね、フィッシュボーンは。初期は特にPMA(=Positive Mental Attitude)って事を強調してたんですが、ものすごくヘヴィーで理不尽な現実に怒り、嘆きながらも、絶対に前向きな姿勢をやめない。意地でもポジティヴっつーか。そういうアティテュードは、もちろん作品中からも伝わってくるんですが、やっぱりライヴ!ですよ。あんなにダイヴ続出でグチャグチャなのに思いっきりポジティヴなライヴは、フィッシュボーンにしかできないです。まだ未体験の人は、ぜひぜひ体験してみてください。(mine-D)


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