トゥルース・アンド・ソウル
Truth And Soul(1989)
Sony Music 1988
日本盤CD:SONY/25DP 5149

Freddie's Dead / Ma and Pa / Question of Life / Pouring Rain / Deep Inside / Mighty Long Way / Bonin' in the Boneyard / One Day / Subliminal Fascism / Slow Bus Movin'(Howard Beach Party) / Ghetto Soundwave / Change

 カーティス・メイフィールドのカヴァー曲「Freddie's Dead」で幕を開ける89年発表の作品。初期のスカ・パンク色の強いサウンドから、やや、「やわらかい」印象を残したセカンドを経て、ここへ来てバンドサウンドに大きく深みが出た感がある。初期の名盤と呼んでいいだろう。「Freddie...」は、フィッシュボーンのキャリアの中ではいちばんのヒットを記録した。「Ma and Pa」など、ノリのいいスカ・チューンや、「Subliminal Fascism」といったパンク・チューンもしっかりキメつつ、全体的にはファンク、パンク、スカ、バラードさらにはカントリー(と呼んでいいのか)…そんな音楽スタイルまで、実にヴァラエティに富んだ作品。

 前述の「Freddie...」では、後のヘヴィ・ロック路線に通じるようなギターのリフが聴ける。強烈なアンチ・ドラッグのメッセージを込めた曲で、フィッシュボーンと同じく、ブラック・コミュニティのヘヴィな現実を訴え続けた先達、カーティス・メイフィールドの曲をハードアレンジでカヴァーするという、エキサイティングな試み。他にはブリブリにファンキーなノーウッドのベースが暴れまくる「Bonin' In The Boneyard」などが聴き所。

 特にこのアルバムにおいて特徴的なのは、黒人低所特層社会における差別、貧困といった問題を正面から捉えた曲が多いことだ。先に触れた「Freddie...」を筆頭に、「1940年代に生まれたおれの両親。彼らは選挙権を持っていなかった」というフレイズで始まる「Slow Bus Movin'」や、「また殺人の悲劇が起こった 警官が若いブラザーを射殺したんだ」と歌われる「Ghetto Soundwave」。このアルバムで彼らが告発している問題の多くは、他の作品と比べてみても、ひときわ重い。にもかかわらず、音楽的には思わず体が動き出してしまうような、ダンサブルかつカラフルな印象を与えるサウンドなのだ。

 こうしたヘヴィな手触りの曲の最後は、クリス・ダウドのリード・ヴォーカルによる美しいバラード「Change」で幕を閉じる。この上なくハードな現実の中にいて、手の施しようがないような惨状を目にし、無力感、虚無感に打ちひしがれながらも「この現状を変えられるはず」という希望、祈りを捨てない…。彼らのスピリットを凝縮したような名曲だ。(mine-D)




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