パズル/ザ・シーディー・アーケストラ
Puzzle/The Seedy Arkhestra
1997
日本盤CD:TACHYON INTERNATIONAL/TICI 25

You Can't Do That / Flog Your Dead Horse / Shing-a-Ling / A Thousand Tears / How Will I Know / Despite The Tears / Puzzle / Burn / Baby Would Your Take Care Of Me?

 フィッシュボーンを脱退したクリス・ダウドがシーディー・アーケストラ名義でリリースしたソロワーク。この「アーケストラ」(Arkhestra/Arkestra?)という名称は、クリスが敬愛していたフリー・ジャズ界の大物キーボーディスト、サン・ラーが、かつて自身のバンドをそう呼んでいた事から由来しているらしい。この作品はサン・ラーに捧げられている。

 クリス・ダウドが、フィッシュボーンというバンドにおいて占める位置は非常に重要だった。アンジェロとタメを張るくらいの激しいステージング、ソングライター、シンガーとしての才能…。彼がバンドを脱退したと知ったときはとても残念に思った。しかし、このアルバムを聴いて、彼がバンドを辞めた理由が、なんとなく分かった気がした。

 音楽的要素としてはスカ、レゲエ、R&Bといった、フィッシュボーンで見せていたそれとさほど変わる訳ではない。しかし、フィッシュボーンのサウンドと比べると、その手触りはまったくと言っていいほど違う。最初の3曲こそ思わず体が動き出しそうなダンサブルな曲だが、それ以降、延々と続くのはゆったりとしたペースのラヴァーズロック。クリスの、ナイーヴで優しい側面を思い切りさらけ出したといった趣。これこそが、クリスが本当に鳴らしたかった音なのか。だとしたら、フィッシュボーンの攻撃的な部分と相容れなくなったのも無理はないと思わされる。

 4曲目以降、展開されるしっとりとした味わいのバラッド。ここでのクリスは恋する事の悲しさ、切なさ、ほろ苦さを切々と歌い上げている。同じような感触の曲が続いているわりには、一曲一曲のメロディがしっかりと「立っている」せいか、飽きるということはない。

 心のいちばん柔らかい部分を、そっと触れられているような気持ちにさせられる優しくて、少し切ない作品。この作品のリリースの後、2004年春現在まで、クリスのソロ活動に関する噂は聞き及んでいない。一刻も早く次の作品が待たれる。




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