Sony Music 1993 日本盤CD:SONY/SRCS 6752 Swim / Servitude / Black Flowers / Unyielding Conditioning / Properties of Propaganda(Fuk THis Shit on Up) / Warmth of Your Breath / Lemon Meringue / They All Have Abandoned Their Hopes / End The Reign / Drunk Skitzo / No Fear / Nutt Megalomaniac |
フィッシュボーン史上もっともハードコアなナンバー「Swim」で幕を開ける本作。この作品と前作を併せて「ヘヴィ・ロック2部作」と呼ぶことができるかもしれない。こうしたヘヴィ・ロックサウンドへの取り組みは、オリジナルギタリスト=ケンダル・ジョーンズの意向が強く反映していたらしい。この作品のクォリティも、前作同様かなり高い。が、ここでは前作の一部に見られたようなユーモラスな感覚はそぎ落とされ、よりシリアスな世界観が展開されている。 これは前作にも共通して言えることだが、すべての曲において音の厚みが凄い。例えばP-Funkのライヴのように、怒濤のごとく繰り出される音数の波に翻弄されるのと同時に、ぶっといグルーヴ感が体中にしみ込んでくる…。そんな印象のサウンドだ。 印象に残る曲を挙げてみると、まず、おそらくは黒人女性の事を歌っていると思われる、悲しげな「Black Flowers」。「それでも夢見る事をやめない。愛し続ける」と歌うクリス・ダウドのヴォーカルが切ない。「Unyielding Conditioning」は抜群にメロディのいいオールド・スタイルのスカ・ナンバー。こういう曲を聴くと、本当にフィッシュボーンは素晴らしいスカ・バンドだと感じさせられる。他にはもろにP-Funkを感じさせるぶっといグルーヴの「Properties Of Propaganda」などなど。 クリス・ダウドがヴォーカルをとる曲は前作から増えてきていたが、この作品でも「Servitude」「Black Flowers」「End the Reign」など(未確認だが、おそらくこれらの声はクリスだと思う)でリードヴォーカルをとっている。アンジェロの攻撃的なヴォーカルとは違い、彼の声にはある種内向的な独特の雰囲気があり、いいのだ。クリスによる曲は、フィッシュボーン・ミュージックの一側面として確立されたと言っていいだろう。 他のアルバムでは見られない、少しユニークな曲は、ジャズの名サックス・プレイヤー、ブランフォード・マルサリスがソロを吹いている「Drunk Skitzo」(「飲んだくれの分裂症」)。「アヴァンギャルド・パンク」と呼べばいいだろうか、特にアンジェロ・ムーアの持ち味が影響しているのだろうが、バカバカしさと狂気に満ちあふれた、すばらしい作品だ。 なお、邦題の「モンキーの惑星」についてだが、筆者など最初見たときは「なんという適当な邦題をつけやがる」と憤慨したものだが、実は映画「猿の惑星」で描かれているテーマが「人間の傲り高ぶりに対する痛烈な批判」だったという事と、このアルバムのタイトルが「猿に脳みそをやってみろよ、『おれが世界の中心だ』って言い出すぜ」である事を考え合わせると、この邦題もあながち的を外しているとは言い難いのだ。もちろん、当時のレコード会社の担当者がそこまで深く考えていたかどうかは定かではないが。(mine-D) |