フィッシュボーンの逆襲
Chim Chim's Badass Revenge(1996)
Rowdy Records 1996
日本盤CD:BMG/BVCA695

Intro / ChimChim's Badass Revenge / In The Cube / Beergut / Interlude 1 / Psychologically Overcast / Alcoholic / Love...Hate / Interlude 2 / Riot / Monkey Dick / Sourpuss / Rock Star / Pre Nut / Nutmeg

 ギタリストのケンダル・ジョーンズが、父親の影響でカルト宗教にはまり、バンドを脱退してしまう、クリス・ダウドもバンドを脱け、レコードは売れず、古巣ソニーからは首を切られ…とバンドにとってはとてつもなくハードな出来事が続いた末、ボーイズIIメン、TLCなどを手がけたプロデューサー、ダラス・オースティンの有するRowdy Recordsからリリースされたのがこの作品。

 基本的には、前作までの路線を踏襲した、わりあいハードなサウンド。ここに見られるのは、紛れもなくフィッシュボーン的音世界だが、前作までと比べると、どうにも空回りしている感じだ。これ以前の作品に見られたようなカラフルな印象がなく、いわば「彩度が低い」という感じ。また、表現に余裕がなくなっているような印象も受ける。まあ、バンドの状況を考えると無理もないのだろうが…。

 アンジェロが1995年から始めているポエトリー・リーディング・ソロプロジェクト「Dr.MaddVibe」からの影響も出ており、「Interlude 1」「同2」はまさに彼のソロ作で見られるようなポエトリー・リーディング作品となっている。

 分かりやすいヒップホップでもなくR&Bでもない、ロック、スカ、パンク、ファンクを混合した特異な音楽スタイルを貫き通したブラック・アーティストとして、フィッシュボーンは真に革新的であったし、意味のある事をやってきた。しかし、結局マーケットは彼らを受け入れなかった。彼らは一度もブレイクする事なく、ここまで来てしまった。なぜか。いちばん大きな原因のひとつに黒人差別がある。自分たちを取り巻く音楽産業自体に初めて直接言及した「Rock Star」においてアンジェロは、こう述べている。

音楽産業…白人のロック・スター
どこもかしこも…白人のロック・スターだ
(中略)
ほんの少しの…黒人のロック・スター
ただの記念に…黒人のロック・スター
ケンの立つ事を歌ったりはしない
黒人のロック・スター

 我々リスナーは、無意識のうちにこういった差別を行っている。売れているロック・バンドはみんな白人バンドばかりだ。白人はロック、黒人はヒップホップ、R&B…という、無意識の先入観念が、送り出す側にも受け取る側にもある。もちろん例外がない訳ではない。しかし、今の音楽産業をざっと見回してみた時、こうした構図ははっきりと際だって見てとれる。なぜ黒人のロック・バンドは売れないのだ。

 日本盤タイトルは「フィッシュボーンの逆襲」だ。しかし、残念ながら彼らはこの作品においてはリベンジを果たすことができたとは言えない。これは彼らの敗北であると同時に、我々リスナーの敗北でもある。(mine-D)




TOP
NEWS | WELCOME | MEMBERS | ALBUMS
CHARMS | HISTORY | LINKS | BBS